ひとりで目覚めてひとりで片付ける一日。
世界で起きていることにようやく目を向けはじめてから、みやこが息を引き取ってからのぐらぐらした日々をはかり知ってか、お知り合いがあたたかい小包を送ってくれた。母とならんでかじったチョコレートのことを思い出した。やさしさに胸がぎゅっとなった。
停戦合意が承認されてからも命が奪われていること、停戦合意が承認されても奪われた命が戻ってくるわけではないこと。もう手の施しようもないほど何層にも折り重なった自己矛盾のなかで、それでもおなじ時代に生きるひとりの人間として、耳や目を塞いではならないと思う。
みやこがいなくなってから、白猫のビビは居間のロッキングチェアやピアノの上でよく丸くなっている。母から、ゆうべ部屋の換気をしているとき、ビビが窓の隙間から飛び出した話を聞いた。地元では雪が深く降り積もったようで、ビビは外の世界に触れた途端、生まれてはじめての雪に全身包まれてしまったらしい。足を取られて飛ぶにも飛べずうごけずで、慌てふためいてうにゃうにゃうにゃと訴えていたと、母は笑いながら話していた。
目を閉じて、しろいビビがしろい雪の中に降り立つところを想像する。昨日この世界でたしかな現実として起きたその一瞬のことが、私にはなんだかとても神秘的でかけがえのないものに思えた。
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