講義を三つ受けた。現代文学の話はやっぱりほっとする。ぐんぐんはいってくる。国木田独歩「春の鳥」について。白痴の男の子が天主台にまたがって優しい声で歌う、「空の色、日の光、古い城あと、そして少年、まるで絵です。少年は天使です」。彼は鳥の真似をして崖から落ちて死んでしまうのだけれど、私の中に浮かび上がってくるその子のイメージと映画『オーバーフェンス』で鳥の求愛を真似て踊る蒼井優がかさなる。鳥と狂気の同調性、鳥と純白の親和性。
議論の文脈で、エドワード・アビーの『砂の楽園』という作品を知った。
名づけられた事物よりも、名づける行為のほうに関心が向かうのだ。そして名づける行為の方が、事物よりもリアルになる。かくして、世界はふたたび失われる。いや、世界は残る。……失われるのは、ぼくらのほうだ。
水曜日は、死ぬことや脳科学のこともいっぺんに学ぶからくらくらする。頬にあたる雨の芯がしっかりとしていて安心する。若葉が今日も濡れていて、この頃の欅はほんとうにきれいだと何度でも思う。
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